歌集
今日は松村正直さんの第四歌集『風のおとうと』を読む会に参加します。 いま、わたしのなかにあるものをここにまとめておきます。 読む会でみなさまの読みに出会えること、そしてそれによってこの歌集への思いをさらに深められるであろうことを楽しみにして…
『葡萄木立』にひきつづき『朱靈』を読みました。 『朱靈』には『葡萄木立』以後七年間の、715首に及ぶ作品が収められています。 ◆見えすぎる目は遠のいて 雁を食せばかりかりと雁のこゑ毀れる雁はきこえるものを 水の音つねにきこゆる小卓に恍惚として乾…
このところ葛原妙子歌集『葡萄木立』を読んでいました。次第に葛原妙子の世界に夢中になっていくのを感じながら読みました。(旧字は代用しています) ◆二つのものの生の相似を掴む比喩 あゆみきて戸口に鈍き海見えし猫は月光のやうにとどまる 飲食ののちに…
水中より一尾の魚跳ねいでてたちまち水のおもて合はさりき 水面にぐぐっと接近した、的確にして無駄のない景の把握。そしてそれにより、魚が跳ねた、というだけにとどまらない雰囲気が醸しだされる。 「この歌は、ことばが発見する景の新鮮さという点におい…
あやまちて切りしロザリオ轉がりし玉のひとつひとつ皆薔薇 ロザリオの糸が切れて手元から転がっていくいくつもの珠が、薔薇の花へと姿を変える、そのさまが美しく目に浮かぶ。ロザリオは聖母マリアへの祈りの場面で身につけるものであり、薔薇は聖母マリアの…
先日、カルチャーの仲間による『汽水域』出版のお祝い会がありました。 以下は、その際に10首選をしてお話しさせていただいた内容です。 ◆若かりし頃を回顧する 井戸はまだとどめているや覗きたるまだ少年の我の素顔を(119) 若き日にヨルダン川にもとめた…
春野りりんさんの第一歌集『ここからが空』、さまよえる歌人の会にてレポートさせていただきました。 ◆自然と響きあう感受力 ガウディの仰ぎし空よ骨盤に背骨つみあげわれをこしらふムスカリの新芽のひかり仙骨を大地にますぐ保ちあゆまむガジュマルの星夜の…
『片翅の蝶』は潮音所属の高木佳子さんの第一歌集。 てのひらの砂をこぼして笑ふ子が砂より軽くわれを侮る若からぬわれは子どもの笹舟に託す思ひをひそかに選ぶわが知らぬ世界に立てる少年に追ひつくために日傘を閉ぢむ幼子はぬれやすき頬既に持ついのち逸る…
江戸雪さんの第六歌集『昼の夢の終わり』について以前一首鑑賞でも取りあげたけれど、まだまだ書きたいことがあるのであらためて、、、。 この歌集で印象的なのは、表現の過剰さやことばへの負荷がなく、細やかな感情の襞を平明なことばで丁寧に掬いあげてい…
影かもしれぬわたしよりのびこの影は日傘ゆたかにひろげて歩く 歌集にしばしばみられるのは、わたしという境界が曖昧に溶けだすような感覚である。この歌においても、そもそも影かもしれないわたしからのびる影、というどこか自分を俯瞰しているようなまなざ…