一首鑑賞〈青いながぐつ〉
雪の中とりのこされた靴がある子どものための青いながぐつ
/安田茜「default 」
雪のなかにとりのこされた青い長靴は、たとえば雪をみればうれしくてあとさきも考えず飛び出していった幼さそのもののように、あるいはそんな子を案じつつ見守る親心ように、なつかしく、うつくしく、そこにある。けれど、おそらく主体は長靴に触れることはない。ただみつめるだけである。触れることが躊躇われるのだと、そんな気がする。
真っ白な雪のなかにぽつんとある青い長靴が放つ存在感、長靴にそそがれるまなざしの透明感、そしてそのまなざしが感じているであろう喪失感。そうしたものが、徹底的にそぎ落とされた文体のなかにきわだっている。