塔5月号作品2より
呼び方を変える過程で消えてゆくものはなんだろう呼ぶ声がする
/紫野春「塔」2017年5月号
この膝をあふれてしまいそうなほど猫のからだのゆるんでおりぬ
/田村穂隆「塔」2017年5月号
うつすらと眠ると言ひしわが乙女わたしの耳に言葉とねむる
/千村久仁子「塔」2017年5月号
満月とわたしは位置を変えながらそれでも近づくことは無かった
月もいつか花火のように消えてゆくそのいつかまで川は流れる
/鈴木晴香「塔」2017年5月号
その場では笑ってしまうわたくしの夜更けに捏ねている鬼瓦
/吉田恭大「塔」2017年5月号
春の海青いひかりを手放して魚群の血液重たくさせる
/池田行謙「塔」2017年5月号
つたへても伝へても雪 耳もとにとどいたらすぐ消ゆるさだめは
/小田桐夕「塔」2017年5月号