塔12月号作品2より③
秋の日はおのづと人は向ひ合ひどこかでグラス触れる音する
/福田恭子「塔」2016年12月号
秋になると感じてしまう人恋しさ。「どこかで」という言葉により自分の感情から距離を置いたかたちであるが、それがかえって秋という季節のものがなしさを際立たせている。
近しいと感じる人がいない夜のスカイツリーは青き燈台
/山川仁帆「塔」2016年12月号
無性にさびしさを感じる夜、自分がこの世界をさまよう一艘のちいさな小舟になったような気がする。そんなときにはいつも見慣れているはずのスカイツリーの、孤高ともいうべき雰囲気にあらためて近しさを感じる。みずからのゆくてを照らし、よりどころとなる「燈台」のような存在に思えるのだろう。