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欅のみえる家から

中田明子(なかた あきこ)のブログ。心に響く短歌の備忘録。塔短歌会。〈西窓の欅の右へと日没の場所の移りて春が近づく〉

〈水位〉

一首鑑賞 安田茜

教会に入ったことは三度ある   川の水位は日ごとに戻る
/安田茜「weather」『かんざし』創刊号

作中主体はどんな状況下で教会に入ったのであろうか。これまでに三度だけ、ということはクリスチャンではないけれど、ということだろう。単に地元のあるいは旅先での経験のことをいっているのか、それとも教会に行かずにはいられないような、教会という静謐な場所を求めずにはいられないようなことがかつてあったということだろうか。後者であるようにも思われる。それは下句とのかかわりゆえであるかもしれない。
川の水位は雨や海の満ち引きによって水位を変えるが、それもいずれまたもとに戻る、日々その繰り返しである。
作者はどこかみずからのことを冷めた目で客観的に見ているようなところがあるように思う。だからここでも、どんなに激しい感情が自分に沸き起こったとしてもそれはいっときのこと、いずれ自分自身のその感情すら日常のなかで平準化されていくのだ、と達観とも諦念とも思えるような思考が作者のなかにあるように思う。それが下句の川の水位と結びついていくのであろう。
うちに激しさを秘めながらも静かな一首である。
 
そのほかに...

陽に褪せた煉瓦を順にふみながら発話するほどあなたとずれる
点火するようにひとさし指で押す列をはみ出た詩集のひとつ