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欅のみえる家から

中田明子(なかた あきこ)のブログ。心に響く短歌の備忘録。塔短歌会。〈西窓の欅の右へと日没の場所の移りて春が近づく〉

〈ためらい〉

一首鑑賞 永田紅

門をたたけ‥‥‥しかし私ははるかなるためらいののち落葉を乱す
永田紅『日輪』

これは「骨が好き」という題の一連におかれる相聞歌である。
「門を叩け、さらば開かれん」というマタイの福音書の一節を思わせるこの初句に、作者はみずからを鼓舞する。恋を一歩進めようとするのであろう。けれど次に作者は「‥‥‥」という空白の間を置く。この「‥‥‥」は作者のためらいであり思慮であり、その空白の間により読者は次の展開を息をのんで見守ることとなる。
その展開とは「落葉を乱す」。思慮深く、ものしずかな印象のつよい作者であるがゆえに「乱す」という言葉が読者の心に激しく突き刺さる。ものしずかでありながらそのなかにもえる炎を抱く作者をみる思いがする。
そして次に置かれるのがこの一首である。

関係は日光や月光を溜めるうちふいに壊れるものかもしれぬ