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欅のみえる家から

中田明子(なかた あきこ)のブログ。心に響く短歌の備忘録。塔短歌会。〈西窓の欅の右へと日没の場所の移りて春が近づく〉

〈水平線〉

ほんとうは存在しないものとして水平線ははっきりみえる
/池田行謙『たどりつけない地平線』 

〈追いかけてもたどり着けない地平線きみから好きと告げられたくて〉歌集のタイトルにもなっているこの歌の地平線はきみを想う気持ちのあてどなさと重なってゆくイメージであるだろう。
一方、冒頭の歌の水平線も空と海とを分かつものとして、いま作者の目にはっきりとみえている。みえているにもかかわらずどこまでゆけば届くということがない。触れようとして近づけばそれはかたちを喪くしてしまうものである。しかしそれはうつくしく、憧れのように作者の目に映るのである。
なにかとなにかの境界、触れあうところ、混ざりあうところ、そういうものに意識的な作者であると思う。そしてそこには届きそうで届かないものをときに尊く、ときに愛おしく想い希求する作者の姿がみえてくるのである。