〈手紙〉
読みかけの手紙のように置いてある脱がれたままの形にシャツは
/安田茜「twig 」『京大短歌』22号
場面としては夕方あるいは夜、恋人が自分の部屋にやってきて、いかにも無防備にシャツを脱ぎ捨てているのだろう。
そのシャツを作者は「読みかけの手紙のよう」だという。整えようとして、これって触ってしまっていいのだろうか、と一瞬躊躇する。どこか触れがたい雰囲気を纏っているように作者には思えたのだ。それはその日一日を作者の知らないところで生きていた恋人、自分とは別人格である恋人へのささやかながら敬虔な気持ちのあらわれともいうべきものではないだろうか。
この「twig」という連作のあとには短いエッセイがついている。時間についてのその文章がとても素敵だったことを書き添えておく。