読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

欅のみえる家から

中田明子(なかた あきこ)のブログ。心に響く短歌の備忘録。塔短歌会。〈西窓の欅の右へと日没の場所の移りて春が近づく〉

〈傘〉

いつも傘に雨はあふれて正しいといふ言葉の中のかなしみを遣る
/河野美砂子『ゼクエンツ』

〈正しさ〉って何だろうとよく思う。それは一見絶対的なもののようにも思えるけれど、本当の〈正しさ〉とは人それぞれの中にあるものだろうと思う。
他人の〈正しさ〉によって切り捨てられてしまう自分の〈正しさ〉や、自分の中にある〈正しさ〉によって切り捨てなければならなくなる何か。この歌には、そういうものへの痛みの感情があるように思う。
「いつも傘に雨はあふれて」というそこはきっとあふれんばかりの感情の行き場なのであろう。そこにかなしみを放ちやり、作者はまた前を向こうとするのかもしれない。