欅のみえる家から

中田明子(なかた あきこ)のブログ。心に響く短歌の備忘録。塔短歌会。〈西窓の欅の右へと日没の場所の移りて春が近づく〉

江戸雪歌集『昼の夢の終わり』より

うとうとと夜空の窓を見ていた日ひとの身体は縫えるのだと知り
/江戸雪『昼の夢の終わり』

あとがきを読むと作者は大きな手術をしたという。歌集には〈この夏は鈍感になろうこの夏がすぎたらひとつ臓器を喪くす〉という歌もある。
この歌はその手術を終えたばかりの病院のベットで詠まれたものであろう。窓から見えるのはいちめん夜空だけ。そんな状況で、自分の身体が手術台の上で縫い合わされたことをぼんやりと思っている。そこにあるのは肉体的な痛みよりもむしろ心の痛みである。
「ひとの身体は縫えるのだと知り」という言いさしが、ふたたび上句に戻っていくような不思議な感覚を呼び起こす。大切な臓器をひとつ失ったかなしみを夢とうつつを行き来しながら何度も反芻する作者の姿がせつない。