永田紅
両岸をつなぎとめいる橋渡りそのどちらにも白木蓮が散る(白木蓮:はくれん) /永田紅『日輪』 これは作者が大学受験を終え浪人生活をはじめた頃の歌である。まず目をひくのは、橋とは両岸をつなぎとめているものである、という把握である。歌集には〈対岸…
門をたたけ‥‥‥しかし私ははるかなるためらいののち落葉を乱す/永田紅『日輪』 これは「骨が好き」という題の一連におかれる相聞歌である。「門を叩け、さらば開かれん」というマタイの福音書の一節を思わせるこの初句に、作者はみずからを鼓舞する。恋を一…
オフェーリアながれ、アネモネ手を離れ水辺のような部屋を歩みぬ野の花を束ねいたりし手のちからゆるみてもなお言葉はのこる/永田紅『北部キャンパスの日々』 『北部キャンパスの日々』は日付のある歌として『歌壇』に一年間連載された作品がまとめられた歌…